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境界線の向こう側 (2月25日(火)と3月6日(木)に上映)

◆解説◆
小谷内郁代監督第1回監督作品。が、デビュー作と侮る事なかれ。小谷内監督、アダルトビデオなどの世界では何本かの監督作を持ち、本作が満を持して映画への初挑戦!そんな監督の映画への思いが存分に込められた、快作に仕上っている。
幸せな同棲生活を送っているゲイのカップル。が、そこに片方の父親が癌で余命1年ということが分かる。母親が、せめてお前の花嫁を死ぬまでに見せてやりたい、と切々と訴えてくる。ゲイの現実に、どこにでも転がっている話しだ。親にはカミングアウトしたくない。となると…。
ネットで、ゲイとレズビアンのための偽装結婚のページを見付け、そこにアクセスし、あるレズビアンの女性と知り合う。彼女も同じような理由で、相手を探している。メールのやり取りで意気投合した2人は、ペーパーウェディングの話を進めるために、実際に会うことになり、彼女の住む町へ向かう旅に出るが、そこに嫉妬からこの話を潰そうとする彼女の恋人の女の子が現れて…。
映画は後半から、そんなゲイカップルと、突然現れた女の子とのロードムービーになっていく。旅先でいろんな人と出会い、成長していく2人。ここからがいい。何か思わずスクリーンに向かって、応援したくなってくる。また、ロードムービーならではのロケーションも素敵です。
小谷内監督の女性の感性が、レズビアンの設定にリアリティーを持たせ、充分納得できる内容になっているのが、この作品の強みでしょう。でもって、先に触れたように、AVをやっていた監督なので、SEXシーンの見せ方は涎もの。興奮できます。主役の2人もいい男なので余計にGood。良質のエンターテイメント映画だといえます。
全ての同性愛者への応援歌、監督の狙いが爽やかに伝わってくる、そんな映画です。
なお、残念ながらこの作品の上映中に映画館にこれない方、興味があるんだが遠方なのでという方、この作品はビデオでも見ることが出来ます。
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◆スタッフ・キャスト◆
[監督・脚本]小谷内郁代 [脚本]今村千絵 [撮影・照明]小山田勝治 [助監督]吉田國文 [音楽]安田光一 [編集]酒井正次 [製作]オフィスガレージ [配給]ENKプロモーション
[出演]八幡現代、西岡秀記、佐々木麻由子、麻生みゅう、野上正義、佐野和宏、森山龍二

発情娘 糸ひき生下着 (2月25日(火)と3月6日(木)に上映)

◆解説◆
☆結婚という形式的な図式にこだわらない若い男女カップルと、ゲイの好男子との、性差に囚われない共同生活を描いた作品で、1998年度ピンク映画大賞ベスト10第5位に輝いた。
同棲して4年、2人の名義でローンを組みマンションまで買った。男の方はサラリーマンで、女の方はディスプレイ・デザイナーだ。結婚という紙切れ1枚の儀式には2人とも興味なく、お互いがいい関係でいられるので、このままでいいと思っている。そんなある日、男の方に長期出張が入る。その間はずっと出張先に単身赴任となる。女がちょっとしたストーカー騒ぎに巻き込まれていたので、男はその対策としてその間部屋に、高校時代からの親友の男を同居させることにした。その親友、実はゲイで、だから自分の不在の間に部屋に住ませても、彼女とは何も起こらないと思ったのだ。ただゲイの彼にとっては、その男は親友だけでなく、昔からずっと恋焦がれていた相手だったのだが。こうして、男と女とゲイの彼との微妙な新しい生活が始まるが…。
1998年という公開年度から考えると、まだLGBTという概念が十分に理解されていなかった時期で、そんなときにピンク映画というマーケットの中でこのセクシャリティーを越えた展開の物語は異彩を放つ。まさに時代を先取りしていたと、言いきっても差し支えないだろう。また、こういう性差を超越するようなコケティッシュな役を演じたのが林由美香だったというのが、この作品を見事に成立させた立役者なのも間違いないだろう。ちなみにゲイ男子を演じたのは川瀬陽太だ。
◆スタッフ・キャスト◆
[監督]吉行由実 [脚本]五代暁子 [助監督]瀧島弘義 [撮影]小西泰正 [照明]渡波洋行 [音楽]加藤キーチ [編集]酒井正次 [録音]シネ・キャビン [製作]オフィス吉行 [配給]大蔵映画(1998年)
[出演]由美香、河名麻衣、石川雄也、川瀬陽太、原知佐子、吉行由実

