映画こぼれ話
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『ハードコア・デイズ』日本公開までの日々   プロデューサーSK : 2015/08/22(Sat) 16:45 No.4
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洋画を日本で公開するには、色々と大変だ。
今回はこのたびローズ劇場で公開される『ハードコア・デイズ』を例に、その舞台裏作業を紹介したい。
外国で作られた映画の上映権利を買って、日本で公開するには様々な方法がある。一番有名なのは、海外の映画祭へ行って、現地でそれを見て、これはいけると思ったらその場でその作品のエージェントに交渉するというのがある。だが、そんな場所に出品される作品というのはごく僅かで、多くは何らかの伝手を頼って、サンプルビデオという形で海を越えてやってくる。

ある日、映画プロデューサーで、監督でもある鈴木章浩氏から連絡があった。
鈴木氏とは大木裕之監督の『あなたがすきです、だいすきです』『たまあそび』のプロデューサー、そして『天使の楽園』の監督として、一緒にゲイ映画を作ってきた。また、フィリピンの衝撃的なゲイ映画『真夜中のダンサー』を共同で輸入し大きな話題を提供したりした、気心の知れた仲である。

「アメリカの作品でね、凄くエロいし、ストーリーも面白いし、デボラ・ハリーとか一流どころが出演してる、いい映画があるんだけど」
「アメリカ映画なら権利高いでしょう。ウチでは手を出せないよ」
「それがさ、ちょっとした伝手で来たもんだから、無茶な値段じゃないんだよ。サンプルビデオ送るからさ、一度見てくれる?」
ということで、ビデオが送られてきた。
といっても、そのビデオは当然アメリカのサンプル盤なので、日本語字幕などは入っていない。自慢じゃないが私は英語はチンプンカンプン。一緒に送ってもらったあらすじのペーパーを見ながら鑑賞すると、細かいところまでは分からないが、なるほど鈴木氏の言う通り、エロくて、面白い。
そして値段も、一社じゃちょっときついが、ウチと鈴木氏の会社で共同で出資すれば何とかなりそうだ。ということで、GOとなった。もちろん向こうのエージェンシーとの交渉は英語が堪能な鈴木氏が受け持ってくれた。

ここからが実務である。
まずアメリカからプリントが届くと、まず税関の試写室で審査を受ける。
この映画を日本に輸入してもいいのかどうかの税関員の判断だ。つまりこの試写室内は、法律上は日本国内ではないということになる。ここでNGが出ると、プリントはそのまま強制送還となるのだ。そしてここでOKが出て、初めて日本語字幕の焼付けという作業に入れる。
翻訳、日本公開タイトルの決定など、次から次と作業がある。特にこの作品の原題は、英語のエロ系のスラングなので、そのままをカタカナ表記したのではまったく意味が分からないので、どうしても邦題を付けなければならない。色々おバカなタイトルも出たが、結局鈴木氏の案で『ハードコア・デイズ』に決定。
そうしてようやく日本版のプリントが出来上がったところで、映倫審査を受けて、まさにようやくようやく劇場で上映ができるということになるのだ。

正直言うと、経費や作業の複雑さを考えると、新作映画を撮影する方がうんと楽だ。しかし、ウチと鈴木氏が動かなかったら、この作品には大手やアート系の会社も含めて、どこも手を出さなかっただろう。つまり日本では見れなかったということになる。この作品がこうしてローズ劇場のスクリーンで上映されることというのは、少しばかし私たちの働きがあったからかなという誇りも混じっている。

とにかく、アメリカ・インディペンデント映画の傑作『ハードコア・デイズ』、ぜひご覧いただきたいと思う。
お盆休み、皆様のご来場をお待ちしています。

(ローズメルマガ16号より転載)

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ID:jgfapS.I72


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