映画こぼれ話
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カジノ監督と『鎖縛 SABAKU』   プロデューサーSK : 2015/08/22(Sat) 15:01 No.1
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カジノ監督の渾身作『鎖縛 SABAKU』の完成試写会が終わってから数ヶ月経った頃、突然カジノ監督が東京からやって来ました。事前に何の連絡もなく、大阪へまさに唐突に現れたという感じでした。
「もし、ぼくがいなかったらどうするつもりやったん?」という問いに、監督は「どこかの温泉でも行って、また2日後ぐらいにでも再訪問する気でした」との答え。東京からも青春18切符を使って、丸1日掛けてやって来たというのです。驚きましたが、その行動はいかにもカジノ監督らしくって、笑ってもしまいました。
『鎖縛 SABAKU』はカジノ監督のデビュー作です。業界ではその実力から、長い間デビューを待たれながらも、なかなか監督自身が腰を上げなかったもので、結構時間がかかったのです。そのため、完成試写会後の打ち上げには多くの業界の仲間が駆けつけてくれて、大人数の長時間のパーティーになりました。もちろんその主役は監督で、次から次と祝杯が注がれていたため、あまりぼくと話す時間がなかったのは事実です。プロデューサーは本心ではこの映画の出来をどう思っているんだろう、というのが監督は実は気になっていたのでしょう。改めてそれを聞き出すというのも何となく照れくさく、それで突然旅行の途中のような振りをしてぼくの前に現れるという手段を取ったのでしょう。そういうシャイなところがカジノ監督にはあります。それが彼の長所でもあり、短所でもあるのかもしれません。
その日、カジノ監督とはいろいろな話をしました。ぼくが『鎖縛 SABAKU』という作品に対してどう感じたかは、監督自身もとても納得してくれたことはよく覚えています。
カジノ監督はその後、「青春18切符がまだ残っているので、やっぱり温泉にでも入って、一人打ち上げをして帰ります。関西のお勧めの温泉を教えて下さい」と言い、冬だったものでぼくは「この時期は城崎やな。温泉と蟹」と言うと、「じゃ、行ってきます」と笑顔で旅立っていきました。

その後この『鎖縛 SABAKU』という映画は、様々な評価を得ました。SM、暴力シーンの強烈さゆえ、それが堪えられない人から厳しい声が出たのも事実です。でも映像の圧倒的な力は多くの人を揺さぶり、カジノ監督はその年の新人監督賞を受賞し、さらに海外の映画祭からもオファーがあり、ドイツのベルリンで上映。それを見たドイツの映画プロデューサーのユルゲンさんが大変気に入り、彼の尽力でヨーロッパでDVD発売されるなど、大きな広がりとなっていきました。

今回久しぶりに梅田ローズ劇場のスクリーンで『鎖縛 SABAKU』が上映されるのを、ぼくはそういったカジノ監督とのことを思い出しながら、ワクワクして楽しもうと思います。ご覧になった皆様がこの作品をどう思われるか、ぜひ感想などをホームページなどにお寄せ下さい。お待ちしています。

なお、ヨーロッパで発売されたDVDには、英語、フランス語、ドイツ語、そしてギリシャ語の字幕が選択できる機能が付いています。ということは、スペインやポルトガルでは発売されていないということなんでしょうね。でも、ギリシャ語の字幕というのは初めて見ました。なんとなく奇妙で、笑えますよ。

(ローズメルマガ36号より転載)

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